#4
予告状。 まろんと稚空がこそこそと作ってたのは、予想通りと言うかなんというか……。 それを嬉々として見せながら言ってくる。 「ポイントは差出人なのよ」 「そーだぞ。怪盗アクセスとかやろうと思ったが、それじゃあ分かり辛いからな」 「そんなワケで分かりやすくシンドバッドにしてみたんだけど……」 もう勝手にしてください。 俺は大きく嘆息すると、立ち上がった。 「あれ? どうしたの心時?」 「何か疲れたから帰る。予告状に そんなワケで、ゼン。明日の夜の手伝いよろしくな」 「はいよ」 ゼンがうなずくのを確認してから、俺は後ろ手に手を振って名古屋家のリビングを後にした。 魚月を巻き込みたくないのはまろんも稚空も同じだろうから、仮にゼンについて何かあっても二人がうまく誤魔化すんだろうと思う。 その辺りのことに関しては、二人を信じる他にない。 「……と、すると……」 自分ン家の玄関のドアノブに手を掛けながら、暗澹たる思いで、俺は独りごちる。 シンドバットの名前が出る以上絶対に立ちはだかる人がいるのが目に見えているワケで……。 この件に関する悪魔以外の当面の敵は―― 「かあさんだろうなー……」 どうにでもなれ――そんな投げやりに思いながら、俺は自分の家の玄関を開けるのだった。 はぁ……何か不安になってきた……。 ★ チリンチリーン。 入り口のドアに付いた来客をしらせる鈴が、学校帰りの学生客ラッシュを乗り切ってまったりとしてるお店に響く。 「いらっしゃいませー」 休憩も兼ねて祥子と一緒にお茶をしてた私は素早く席を立つ。 「や。キミ達の隣、いい?」 そして入って来た銀髪の女性の姿を見るなり、途端私のやる気は下降した。 「なんだ、リスティさんか」 「おいおい。一応客だぞ。なんだはないだろう」 やや憮然とした口調ながら、別に不快に思ってないさばけた調子で、祥子の横に腰掛けた。 「いつもね」 勝手知ったるなんとやら。腰を降ろすなり注文を済まし、自分の持つ『力』で灰皿を手元へと呼び寄せる。もちろん、この灰皿はうちの店のもの。 この人はリスティ牧原さん。私の生まれる前からの常連さんだ。 海鳴署の刑事さんで、父さんの話を聞く限りだと結構偉い役職についてもいいくらいの実績を持っているのにもかかわらず、現場が一番性にあってるという理由だけで、昇進の話の事如くを蹴っているというある意味ですごい人。 「はい。リスティさん。日替わりランチとアメリカンの濃い奴」 「お? 今日は和風善か。うまそうだ」 なのはさんからランチを受け取り、リスティさんは頂きますと小さく言ってから、お味噌汁を一口啜ってから言った。 「毎度悪いね、なのは。ランチタイムの外れに来ちゃって」 「いいですよー何時ものことですし。ちゃんとツケさえ払ってくれればー」 にこやかな笑みを浮かべながらも、その笑顔の裏からはちょっとした凄みが見え隠れしててちょっと怖い……。 かつての高町家ナンバーワンはまだまだ現役だったりするのだ。 「リスティさんって、いつから払ってないんですか?」 「失敬な」 祥子の質問にそう返してから、リスティさんは答える。 「なのはの店長就任祝いとして一度返してるさ」 「「それって何年前ですか!?」」 私と祥子の声が綺麗にハモった。 「んー……三年前?」 「四年前です――勝手に一年分もツケを減らさないでくださいよ」 まったくもういつも冗談ばかり言うのだから――そんな感じの笑顔で軽やかにリスティさんのセリフに突っ込みをいれつつ、ぽつりとなのはさんはとんでもない事実をぽそりと漏らす。 「でもあの時の分は五万円ほど足りてなかったりするんですよ? 知ってました?」 四年前からずっとツケ……しかもそれ以前の分も払った時に足りてない……。 改めてリスティさんがどれだけタダ飯を食べているかに愕然している私と祥子とは裏腹に、本人はなのはさん共々いたって平然としている。 なんでこう――私の周りには普通の……そう、色々な意味で普通の人がいないんだろう……。 私は、そんなことを思わずにはいられなかったりするのであった……はぁ――。 「雫。これから時間ある?」 食事を終えたリスティさんは、食後のミルクティを飲みながら――例の如く無理やり淹れさせられたわけなのよ……ううっ、みんな意地悪だ――そんなことを訊いて来た。 ぽつりぽつりとお客さんはいるものの、それほど忙しいわけじゃない。 私は目でなのはさんに聞いて見るとにっこりと微笑み返してきた。どうやらOKらしい。 「平気みたいです」 「そう。じゃあ、コレ」 「?」 リスティさんが手渡してきたのは、一枚のメッセージカード。 どこか清潔で清らかな気配を放つそのカードを受け取って、文面を読む。 フィリス・矢沢様 明晩十時 あなたの持つ『姉妹』の美しさ 頂きに参ります。 二代目 怪盗シンドバッド 「なんですか、これ?」 「見ての通り予告状」 そんなのは言われなくても分かってます。 「そういう意味じゃなくてですね――」 「分かってる。言ってみただけだ」 リスティさんはそう怒るなと肩を竦めてから、ポケットからシガレットケースを取り出して、タバコを一本とりだすとそれを咥える。 「そこにある『姉妹』ってのは、最近フィリスが買った絵のタイトルでね。作者は無名だが、まぁ悪くない絵だよ」 含みのある言い方。 まぁ、だいたい何が言いたいのかは分かった。 「でも、怪盗が盗むほど価値のあるようなものじゃない?」 「まぁね」 タバコに火をつけて、軽く紫煙を吐き出しながら、リスティさんはうなずいた。 なるほど。なら、その姉妹という絵には価格以上になんらかの価値があるのかもしれない。 「それで、これに関する何かで頼みたいコトがあるんですよね? 警察と一緒に警護ですか?」 まぁ、何でそんなコトを頼んでくるかは分からないけど、リスティさんのことだからきっと意味があることなんだとは思う。 そんな考えていると、リスティさんは軽い口調と共に首を振った。 「いや、正直言っちゃうと、とっとと盗んでほしい」 「は?」 思わず私は目を丸くしてしまう。 近くで聞き耳を立てていたなのはさんも祥子も驚いているようだ。 今の話の流れだと、どう考えても私に警護の手伝い等の依頼をするように思えたのに……リスティさんの心中はまったくの逆みたい。 でも…… 「何で、ですか?」 「んー……」 少し答え辛そうに、しばらくリスティさんは天を仰いでいたけど、やがて観念したのか嘆息と一緒に煙を吐き出した。 「 それはそうだ。 絵が原因で人が変わるなんて、それがよっぽどの価値のものじゃなければありえないし、何より相手はあの柔和でのんびりしたフィリス先生だ。 あの人が絵画一つでそこまで豹変するようなことはないと思う。 ……って、あれ? 絵? そういえば、何か絵に関して何か問題を私も持ってなかったけ? 「だから、いっそのコト、盗まれてくれれば……妹の豹変も元に戻るんじゃないかな、ってね」 「リスティさん……」 ほんと、ドライで軽薄な言葉とクールな雰囲気とは裏腹に優しい人だ。 こんな人がお姉さんだからこそ、フィリス先生も優しい人になったのかもしれない。 「ところで、私に何か頼み事があるんですよね? 盗んで欲しいって――もしかして、リスティさんと一緒に警備のジャマをしろとか?」 「そんなこと言うはずがないだろう。仮にもあたしは警官だ」 ごもっとも。 「それじゃあ何を――」 「ん。警護のジャマをして欲しい」 ………………………は? 「いや、でも……今――」 「ああ。あたしと一緒に――じゃあなく、キミ一人で、だ。仮にもあたしは警官だからね。大っぴらにそういうことは出来ないんだよ」 なるほど。 「ついでに言うとさ」 うなずく私に、リスティは続けて言った。 「こと絵のことになると、 マジになったフィリスをあたし以外でまともに相手できる人間をキミ以外思いつかないしね。 恭也なら出来なくもないだろうが、純粋な戦闘力だけでどうこう出来る相手じゃない。 ま、恭也よりは劣るが肉体能力だけなら恭也よりも上なキミに白羽の矢が経ったわけだよ」 「なんか人間外通告されてる気がしますけど――まぁ、だいたい分かりました」 問題はどうやって警護のジャマをするかどうかだけど…… 「ああ。キミの考えてることは大体分かる」 分かるというか勝手に心の中を読んでるだけですよね? 「まぁそーとも言う」 「やっぱり」 「う……思わず心の声に反応を――って冗談はさておいて……」 なんか淡々とし過ぎてて本気で引っかかってくれたのか、はたまた冗談なのかが分かり辛い! 「警備のジャマっていう点に関しては、実は心当たりがあってね。 ちょいと、会って来ようと思ってるんだけども、一緒に来てくれないかな?」 翠屋もそろそろバイトさんが増えるし、私の手伝いを終えるのにも丁度いい感じ。 それに、この後の予定もないわけだから…… 「いいですよ。お付き合いします」 「そうこなくっちゃ」 リスティさんかは席から立ち上がり、私はエプロンを外して、なのはさんに手渡す。 「それじゃあ、なのはさん。月村雫、あがります」 「はい。お疲れさま」 「わたしはもうちょっと手伝ってくわ」 「じゃ、お先にね祥子」 「ん。また明日ねー」 二人に挨拶を終えると、入り口に立っていたリスティさんが小さく笑った。 「それじゃあ雫、さっそくデートとしゃれ込もうか?」 そうして踵を返して彼女は颯爽とお店を出て行く。 おお―― 女の私も思わず惚れちゃいそうなカッコイイ去り方につい見とれちゃったけど、すぐに我に帰って慌ててリスティさんを追いかけた。 「あ。リスティさん、また食い逃げ!」 その直後に、なのはさんのそんな声が聞こえたけれど、私は聞こえなかったフリをしてそのままお店を後にした。 ☆ 「もしかして、おいしくない?」 「ううん。すごい美味しい」 「じゃあ、なーんでムスッとしてるの?」 私が面白くなさそうな表情でスフレを突いていたからか、母さんが不思議そうに尋ねてくる。 正直言ってしまえば、考えていたのは心時のこと。 突然現れた黒天使とやらを捕まえて、そのまま走り去っていた心時の行動は、どう考えたって私と天使の会うことを妨害したがっていたとしか思えない。 何で妨害するのか、とか。あの天使って何しにきたのか、とか、そんな事以上に、あの心時が私に何か隠し事しているのがすごい面白くない。 母さんに答えずに、悶々と一人でスフレをパクつきながらそんな事を考えていると、ポンと、母さんが手を打った。 「わかった。心時のことを考えてるのね」 「な、な、な……」 一言もそんなことなんて口にしてなかった私の考えを母さんはあっさりと看破する。 「隠さなくたっていいじゃなーい」 いや、そんなことを申されましても、天使とか心時がなんか隠し事してるとか、えーっと、だから、その……何が言いたくて何を言おうとしてるんだろ、私……? 思考がやたら絡まりまくる中、にこーっと笑みを浮かべながら母さんが告げる。 「最近、なんか魚月にちょっかいかけてこないからねー。ちょっと寂しいんでしょ?」 そういう意味!? 何か慌て損してない私ってば! 「べ、別に寂しくなんか……むしろ清々してるくらいよ」 「そうよねー……魚月ってば何だかんだで心時のこと気にしてるんだよねー。 もうなっちゃんのツ・ン・デ・レ・さん♪」 こ、この人はぁ…… フォークを握り締め、こめかみを引く付かせながら、私が母さんに言い返そうと口を開きかけた時、玄関が乱暴に開けられる音と共にドタバタと何かが走りこんでくる。 なんていうか私……いっつも反撃前に出掛りを潰されまくってない? 「まぁぁぁろぉぉぉぉぉぉぉぉん!」 慌しくうちへと駆け込んできたのは、お隣の うちの母さんとは幼馴染で、さらにはおばあちゃん同士も幼馴染。さらにさらに私も心時と幼馴染ゆえに、親子三代幼馴染な間柄。 こうして都さんがうちに駆け込んでくるのは実は珍しくなかったりするんだけど、今回はその手に何か――否、誰かを持っている。 シルバーブロンドの……たぶん外人さん。何だか困ってるんだか困ってないんだか良くわからない淡々とした表情で、襟首を都さんに掴まれたままタバコを咥えてる。 さらにはその外人さんも一人、女の子の襟首を掴んでいてその女の子は猫のよるに丸くなっている……って、雫さん!? 「あ、どもー名古屋さん」 丸まったまま挨拶をしてくる彼女に私が呆然としていると、都さんはそのままリビングまでやってきて、母さんの目の前で急ブレーキを掛けるとぽいっと外人さんを放り投げた。 お客さんじゃないのその人!? でも投げられた外人さんはさして投げられたことを気にした様子もなく、空中で体制を整えながら雫さんを掴んでいた手を離す。 彼女も彼女で、空中で姿勢を整えると、外人さんと一緒にリビングのソファへと綺麗にお尻から着地――もとい着席した。 『10.00』『8.57』 母さんがと都さんが突然、そう書かれてプラカードを取り出し掲げ、着席二人はそれぞれ親指を立てて勝ち誇った笑みを浮かべた。 何なのよ、あんたらは? っていうか、そのプラカードどこから……と、疑問に思うまでもなくすでにプラカードはどこぞへと消えてしまっている。 ううっ……何だか一人だけ冷静なのって空気読めてないって気分……。 「で、都。あの人たちは?」 「海鳴署副署長のリンディ牧原警部と彼女が雇っている民間協力者の月村雫さん」 「どうもー」 リンディ警部とやらはどうにも気だるげな感じで挨拶をし、 「なんか、突然すみません」 雫さんは恐縮した感じで誤魔化し笑いのようなものを浮かべながら挨拶をした。 それにしても民間協力者……って、もしかしなくても雫さんって実はすごい人? 母さんは二人と挨拶を交わしてから、再び都さんに向き直った。 「それで都、何?」 直後、都さんの目がギラリと光ったかと思うと、 「これよ!」 母さんのおでこに何かカードのようなものを押し付ける。 「これが何なのか説明してもらうわよ!」 「み、都……見えない……」 そりゃそうだ。 そんな位置でそれが何なのか分かったらすごいと思う。 「けっ」 何だかつまらなそうに舌打ちした後、都さんはそのカードから手を放す。 おでこに張り付いたそれを母さんはペリっと剥がし目を通すと、にっこりと微笑んだ。 「色々事情があるのよ。見逃してね都♪」 「もう私は現場にいないけどね。一応、今回の現場監督さんはそちらの銀髪美人」 「えっーっと……リスティさんでしたっけ? 見逃してくださいね」 「やだ」 即答だよこの人。 いや、そもそも何か今の流れだと、これから母さんがひと犯罪犯してくるように聞こえたんですけど。 「雫にも前もって言っておいたけどね。一応、あたしは刑事さんなわけさ。表向きは真面目に警備をするよ」 表向きって…… 「まぁ、小太刀を二刀携えた殺し屋さんでも現場に乱入してくるようなことでもあれば、窃盗なんて見逃しちゃうかもしれないけどね」 ちらりと、リスティ警部は雫さんに視線を向けると、雫さんは母さんに軽く微笑んだ。 「まぁ、そういうワケなんで……ある程度、暴れますんでそっちはそっちで捕まらないようにしてくださいね」 なんだろう――警察署の副署長と母さん、それに都さんと雫さんが絡んでまるで本当になんかの犯罪計画の打ち合わせのようなことをしている。 なのに内容はすでに全員の中で決定事項なのか、一切出てこない。 これじゃあ、私は完全な蚊帳の外だ。 心時といい……天使といい……母さん達といい…… まるで、私を除け者にして何かを隠してるとしか思えない。 暗澹たる面持ちで、理解の出来ない会話を横で聞き流していると、ふと雫さんがリスティ警部をつつく。 「ん?」 「あの……ちょっと外に出てていいですか? 何ていうかこの部屋の空気――」 「ん。ああ……なるほど。都の話が本当なら、キミの家とと名古屋一家の相性は悪いかもね」 なんだろう……? 雫さんの家とうちが相性悪い? 空気って言うからてっきりタバコの煙がダメ……っていうのだと思ったけど…… 「まぁ顔見せは終わったからね。あたしはもう少し話していくから、しばらくキミは外の空気でも吸ってくるといい」 「じゃあ、まろんさん。都さんすみません」 「なんだか良く分からないけど、気分が悪いならベッド貸すわよ?」 「ああ……そういうのじゃないです」 少し困ったように笑ってから、チラリと私を見た後、雫さんは慎重に言葉を選びながら答えた。 「えーっと……ゲーム的に言うなら私は闇属性で、まろんさんは光属性なんですよ」 良く分からない例え。でも母さんはそれで納得できたらしい。 「ああ――相性ってそういうこと……えーっと、ごめん?」 「いやぁ、謝られてもこればっかりは血筋とか魂の問題ですんで……気にしないでください」 そう言ってから、それじゃあと雫さんはうちから出て行く。 「ところでまろん、稚空は」 「仕事行ったわよ」 良く分からない。良く分からないけど、私の知らないうちに何か良くわからない事件が起きてる。 「そう……もういいトシなんだから、青春に思いを馳せるように夜空を舞うようなことをしないで、って伝えといて。昔惚れてた相手のトシを考えない奇行なんて見たくないわ!」 「大丈夫、同じこともう私が言っといたから」 もしかしたら心時の隠し事やあの天使まで関わってるのかもしれない。 「あらそうなの?」 「というか……二代目だって書いてある」 これだけ隠されているんだから、知らぬ存を通して気にしないっていうのが一番いいのかもしれないけれど…… 「あらホント。誰?」 「うふふ、秘密」 「コラまろん吐け! 「誰でもいいけど、明日はミスらないでよ」 気になるものは気になるんだし、何より私の第六巻というか乙女のカンというか、そんな感じのものがこれは私にとって重大な出来事の前兆だって告げてる気がする。 「オラオラ吐けぇぇぇぇい!」 「うふふふふふふ――い・や」 よし! 私は心の中で気合を入れると、立ち上がった。 「母さん!」 「なに?」 うあ、都さんに首絞められたままだから顔色がやばいことになってる!? 「ちょ……ちょっと出掛けてくる」 「制服のまま?」 「あー……すぐ帰ってくるから」 「そう。いってらっしゃい」 青い笑顔で母さんは私に手を振る。 本気で……怖いって……。 何となく出鼻を挫かれた気分になりながらも、なんとか気を取り直し玄関のドアノブに手を掛ける。 大人達が事情を話してくれないなら、子供から事情を聞きだす! 雫さんならもしかしたら、何か教えてくれるかもしれない! 私だけ蚊帳の外なんて詰まらないは嫌だから! 意を決してドアを開けようとするけど、ノブが妙に重く感じる。 私の中にある何かが、この玄関を引き帰せなくなると警鐘を鳴らす。 でも……少なくとも何もせずに後悔するくらいなら、何か行動を起こしてから後悔したほうがずっとマシだと思う。 ええーい! どうにでもなれ! うじうじと考えるの性にあわない! 気合一発! 私はそのドアを開き外へと一歩踏み出した。 |