#1
「雫〜もう、授業が終わったよ〜」 「ふにゃ」 わたしは友達の声でゆっくりと目を開ける。 「おはよ」 「おはよって……もう、お昼だよ」 呆れながら友達―― 「え〜っと、食堂に行こうか?」 とりあえず言葉が思いつかなかったので、そんな事を言うと、 「うん」 笑顔で彼女はうなずいた。 わたしこと月村雫は表の世界には顔を出さない武術小太刀二刀御神流の剣士(見習い)にして、私立海鳴風芽丘高校の二年生。 ちなみに、父さんと母さんがこの学校に通っていた頃は学校がちょうど合併した頃で、名前が統合されておらず風芽丘と海鳴中央と別々だったらしい。 「今日の雫はいつも以上に眠そうね」 あくびを噛み殺しながらアセロラドリンクを飲んでいるわたしに、祥子が言ってきた。 「ちょっと、ネットゲームしてたらさぁ、不思議なコトに、気付くと朝だったの……」 「またぁ?」 「それで、気付いてからすぐに寝たんだけど、一時間も寝ないうちに起きる時間に……」 「いつもいつもご愁傷様――でもないわね。むしろ自業自得?」 「う〜……」 それは自覚しているだけに反論が出来ない。 よし、今日は早く寝よう――って、決意だけは出来るんだけどなぁ。 「ねぇ、雫。今日の放課後ひま?」 「なに? 突然」 「いいからいいから。平気? ダメ?」 訊かれて、わたしは少し考える。 お店の手伝いは――連絡も来てないし、約束もしてないから平気で、家族との約束も……ない。他の人ともなんの約束もしてないから―― 「平気だけど……何なのよ」 「今日さ、ウチの学校の剣道部が桃栗学園の剣道部と合同練習するのよ。 ほら、桃栗学園って、進学校のわりにはかなり運動部が強いコトで有名な学校でしょ?」 「ごめん、知らない。ウチの学校の運動部のレベルが高いことは知ってるけど」 なんたって、全運動部に一人二人はスポーツ推薦の子がいるくらいだ。 「桃学の剣道部は最近になってウチと同じかそれ以上のレベルに達して来た学校なのよ。 そんなハイレベルな二校の合同練習なんて、全国クラスの選手達の練習を見るのと同じくらい価値があると思わない? これは見に行くしかないでしょ?」 「そんなこと言われても……」 正直、わたしにはどうでもいい話だ。とはいえ、スポーツ観戦に情熱を捧げ――自分でやる気はないらしい――スポーツジャーナリストを目指しているらしい祥子は、一旦興奮するとまずは止まらない。 まぁ、祥子にはよくこっちの趣味であるゲームセンターに付き合ってもらっているわけだから、たまには祥子の趣味に付き合うのも悪くないかもしれない。 それに、一流クラスの剣道家達の練習や動きを見るのはわたしにとってもいいコトだと思う。 というわけで、わたしはこちらに期待の眼差しを向けている祥子に視線を送り、うなずいた。 「ま、いいわ。付き合ったげる」 「ありがとー雫!」 「うわ! いきらり抱きつかないで! アセロラだってこぼれると恐いんだから!」 なんしろ、わたしの放課後の予定は決まったようである。まる。 と、いうワケで放課後になりました。 「ニ時間なんてあっという間ねー」 「そりゃあ、五、六時間目もグースカと寝て過ごしたあんたにしてみれば一瞬でしょうよ――先生達も呆れて起こす気がなかったみたいよ」 「どうりで、起こされないと思ったわ」 「担任曰く『居眠り坊主と居眠り娘の子供はやっぱり居眠り小娘となったようだ』だってさ」 「あはははは、うちの担任は両親の担任もしてたのよねー」 いやあ、縁って不思議。 「あの親あってこの子あり、か」 祥子とは小学校以来の付き合いで、この子はうちの事情にも割合、明るかったりする。 とはいえ、 「なに呆れてるのよ?」 そうあっさりと、納得するように呆れられるとちょっとムカツクものがある。 「別に」 「あ、そう」 この子に呆れられるのはいつものことだから……まぁ、いいけど……。 「それより、体育館に行くんでしょ?」 「うん。そろそろいい時間だと思う」 「それじゃ、こんなところでだべってないで行きますか?」 練習が始まってニ時間ちょっと。祥子はとても面白くなさそうに練習を見ていたりする。 合同練習の真相は、桃栗学園剣道部が普段使っている武道館の改築工事で使えなくなったとかで、体育館の広いウチの学校に練習スペースを借りに来ただけらしい。 ただ、普通の練習だけでは折角風校に来てやっている意味がない。そういうワケで、最初の一時間は風校式基礎練習。次の一時間を桃学式基礎練習と、二校一緒に基礎をニ時間ほどみっちりやっている。 うん。父さんや叔母さんの言ってた通りかも。剣道部の動きっていうのはかなり参考になる。 わたしはわりと楽しんでいるのだが、祥子はおもしろくなさそうだ。 どうやら、祥子はハデな技や練習試合を楽しみにしていたらしく、ぶつぶつと愚痴っている。でも、よく考えれば『練習』の名を冠している以上、そういったことを期待するだけ損な気もするんだけど、まぁ、それは言わないでおこう。 二時間の基礎が終わり、休憩に入り出すと、祥子の愚痴がエスカレートし始めた。 「祥子……」 わたしは半ば呆れながら祥子を諭すように言う。 「あのね、何事も上達するには基礎の反復からなの。技とか応用とか、そんなのは基礎が出来てないとなんにもならないのよ。基礎があるから応用できるし、基礎があるから技へとつなぐことが出来る――だから、こうやって基礎を繰り返しやってるの。OK?」 「まぁ、理屈では」 「よろしい」 どうやら少しは大人しくしてくれるようである。 とにかく、そういう意味では、両校の剣道部の部員達にとってこの二時間は密度の濃い練習できたのでは――と思う。 普段の基礎練習とは別に、普段とは微妙に違うやり方の基礎練習が出来る。 それに、腕のいい人間からしてみれば、基礎練習の様子だけで相手の実力と才能を測る事は容易い。 もっとも―― 「折角の合同練習なんだから練習試合とかした〜い」 「うわっ! こら そういった事がちゃんと理解していない部員は今みたいな事を思っているようだけど。 ちなみに、今のは桃学女子二人のやり取り。暴れてる子は見た限り、結構いいセンいっていた。 他にも、風校、桃学の両校にズバ抜けて腕の良さそうな人達が数人いる。顧問やコーチの腕も悪くなさそうだ。それに、コーチや顧問達の中に一人だけ実力が他の頭二つ分くらい飛び出してる人がいた気がする。 と、 「雫ちゃん」 練習の様子を思い返していたわたしは、突然声をかけられ我に返った。 声のした方に視線をやると、父さんの親友――勇吾さんがいる 「あ、勇吾さん。こんにちは」 「こんにちは」 「こんにちは〜」 「祥子ちゃんも、こんにちは」 「今日はコーチで来てるんですか?」 「ああ。人数が多くなるからって、駆り出されたんだ。他にも何人か。OB、OGは他にもこれから来るよ」 「もしかして、勇吾さんって練習の最初からいました?」 「ああ。いたよ」 なるほど。どうやら、一人だけ飛びぬけて腕がよさそうな人とは勇吾さんだったようである。 勇吾さんは人間離れした父さんと『俺達ルール』とやらで試合をした場合、互角に打ち合うほどの実力者で、高校の時に県ベスト1と全国ベスト8。大学の時に全国ベスト4までいったそうだ。 「雫ちゃんも練習に加わる? 練習について来れるなら参加自由ってことになってるみたい出し」 「それってもう部活じゃない気がしますが――まぁ、なんていうか、遠慮しときます。 父さんや叔母さんも良く断ってたんじゃないですか?」 「まぁね。ごくたまぁに参加してくれたけどな」 「小太刀サイズの竹刀が二振りあるなら、他流試合ってことでやってもOKですけど」 もちろん、そんな竹刀がないであろうこと前提でわたしは言っている。 だが、 「あるぞ」 「ゑ?」 ………………………… 「木刀もな」 お、恐るべし風校剣道部。 「何であるんですか!?」 「いやあ、君の親父さんや叔母さんがいつ来てもいいように常備してあったんだよ」 「それが、二十年近く経った今でもまだ残ってるってワケですね」 「ああ」 今、御神流って実はメジャーなんじゃないかなって思ったりしました。日陰の剣のはずなんだけど……。 「他流試合、してくれるんだよね?」 「う〜……えっと、木刀で、わたしと打ち合って大怪我しても構わないって人がいるなら……」 さすがに木刀で試合をしようなんて無茶をするのは父さんや勇吾さん、叔母さんくらいだろう。 「わかった、後で両校の部員に訊いてみる」 「いや、別に訊かなくても……」 「それじゃ、そろそろ練習再開するみたいだから」 そう爽やかな笑顔を残して勇吾さんは剣道部の輪に戻っていった。 「雫」 「なに? 祥子」 「ご愁傷様」 「それって、試合するの決定ってこと?」 「うん。かわいそうに……」 「ありがと。同情してくれて」 「だって、雫を相手にするのよ。相手の子が可哀想じゃない。同情しちゃうわよ」 「はぁ……勝手に言ってなさいよ……まったく」 どうかやりたいなんて馬鹿を言い出す人がいませんように…… ☆ 「――木刀で打ち合うので、ある程度の加減が出来ること。 何より、剣での勝負とはいえ、他流試合――しかも相手が剣道でない以上、予想のつかない技が繰り出される可能性も充分にある。 それに対して文句を言わないこと。 以上の条件を満たせかつケガをしても構わないという人はいるかい?」 私こと名古屋魚月のいる班のコーチをしてるのは海鳴風芽丘剣道部OGの赤星勇吾さん。 彼はひとしきり説明を終えると、私達を見渡した。 基礎ばかりで飽き飽きしていたところだし、いいタイミングよね。 そう思って、私は手を挙げた。 どうやら、参加者は私以外にいないらしい。ほかの班からのチャレンジャーもいないみたい。 「えっと、名古屋さんだけ? さっき言った条件に問題と異論はないよね?」 私はうなずく。 どんなヤツが来ようとも、この魚月ちゃんにかかればちょちょいのちょいよ。 少し、赤星さんのだした条件が気になりはするけど。 「それじゃあ、相手を呼んでくるから待っていてくれ」 そう言って、赤星さんが連れてきたのは、見学に来ていた海鳴風芽丘の女の子。 肩口まで伸ばした艶やかな黒髪をうなじの辺りで結った色白の綺麗な人。 でも、なんていうかあからさまに嫌そうな雰囲気と気だるげな雰囲気が顔に張りついている。 なんか……腹立つ。 やる気ないなら最初からやるなんて言わないで欲しいわよね。 ――って、欠伸してるし! いい加減、腹を据えかねた私が文句の一つでも言ってやろうと、口をあけようとしたとき、 「はい、雫ちゃん。これでいい? 二十年位前に、うちに遊びに来た美由紀ちゃんが使ってたヤツなんだけど」 赤星さんがやってきて、丈の短い木刀を二振り彼女――雫って名前らしい――に渡した。 「叔母さんが……使ってたヤツ?」 つぶやきながら、彼女はその二つの木刀を二度三度振って感触を確かめる。 「うん。平気みたいです。年代ものだけど特に問題はないみたいですし――何より、ちゃんと手入されているみたいなんで」 そう答えた彼女に赤星さんはうなずくと、 「はい。名古屋さん」 私に木刀を手渡してきた。 軽く振ってみると、長さも重さも私にぴったりだった。 木刀だって相当な数があるんだろうけど、その中から私に合う物を選んで持ってきてくれたらしい。 それって、赤星さんにかなりの技量がないと無理な芸当だと思う――ということは、赤星さんってすごい実力者? 「じゃ、二人とも準備はいい?」 「あ、はい」 「いいですよ」 我に返って真面目にうなずく私。投げやりに答える雫さん。 「試合としては、俺が止めるまで。まぁ、大体は俺が危険だと思ったら即終了って感じだな。 それじゃ――」 赤星さんが手を挙げて、合図をしようとした所で、 「あ、あの!」 私はとんでもないコトに気がついた。 「ん? どうかした?」 「雫さん――でしたっけ? ――防具は要らないんですか?」 そう、彼女は防具をつけてないし、なにより袴ですらない。制服のままだ。 「ん〜……ああ、大丈夫。一太刀も浴びる気ないし」 …………………ピキ! 「そ、そーですか。それともう一つ、構えないんですか?」 「それもまぁ、必要になったら構えるから心配しないで」 …………………ブチ! 完全に、頭にきた! 私は仮面を脱ぎ捨てて、雫さんを睨んだ。 「やる気あるんですか!」 いや、怒鳴りつけてしまった。 彼女はキョトンとした顔をしてから、 「わかったわ。じゃあ、ちょっとやる気を見せてあげる」 そう答えた。 途端、音に現すなら『スーッ』って感じ。彼女の纏う雰囲気が気だるげなものから一転、鋭いものに変化した。 例えるなら、まどろんでる猫から獲物を狙う豹になったみたい。 見た目はまたっく変わってないはずなのに…… 「勇吾さん、合図はいりませんから」 「だろうね」 赤星さんは肩を竦めた。 「名古屋さん。今から好きなタイミングで好きなだけ打ち込むといい。しばらくの間、彼女は一切手を出さない気らしいから」 彼女の雰囲気が変わる前に同じ事を言われたなら、私は完全に頭に血が上っていただろう。 でも、今は、それが挑発でもなんでもなく、彼女自身の絶対的な自信から来るものだと分かる――分かるけど……正直、頭に来る。 「やぁぁぁぁぁっ!」 私は床をけって、思い切り踏み込む。 彼女が大怪我したって自業自得なんだ。 ★ 一歩だけ横にずれて、力の限り放たれた面を避ける。 どうにも名古屋さん――と勇吾さんが呼んでた――は完全に怒っているらしい。 まぁ、理由は分からないでもないけど。 で、その一発で大ぶりは当らないと判断したのか、小技を絶え間なく撃ち込んでくる。 絶え間なくと言ってもわたしの目から見れば穴だらけだけ。 父さんや勇吾さんの攻撃なら、小技でも受け止められないような重みを持ってるけど、所詮は普通に鍛えた女子高生の腕力。重みを持たせる術も知らないような人の小技なら、わたしでも問題なく受け止められる。 わたしが受け止めれば受け止めるほど、彼女は焦りからか技のキレが悪くなっていく。 彼女は攻撃の手を止め一歩引いた。どうやら、連続攻撃も無駄だと悟ったらしい――あるいはバテたのか。 どうやら後者。息が上がってる。 なんであれ修行不足よね。 「はぁ、はぁ、はぁ」 まぁ、肩で息しながらも正眼を崩さないで構えていられる点には及第点をあげてもいいかな? 「はぁ――はぁ―――は……」 攻めてこないのは、どうやればわたしに一太刀浴びせるかを必死に考えているからみたい。 そして、何を思いついたのか構えを正眼から、右下段に変えた。剣の重みで腰を落とし、逆袈裟を狙うかのような構え。剣道というより、両刃の長剣を使う西洋の剣士がしそうな構えだ。 ……って、あれ? 呼吸が――整ってる? あれだけ切れていたのに? ――ドクン え……? ――ドクン! ……っ! 本能が本気になれと告げてくる。油断するなと警鐘を鳴らす。 それは、彼女の纏ってる空気が真剣を知らない剣道家のそれから真剣での戦いをしたことのある剣術家のそれへと変わったから! 「はぁぁぁぁっ!」 木刀を構えたまま、木刀を引きずるように姿勢を低くして踏み込み、逆袈裟に切り上げてくる。 「くっ!」 わたしは一歩下がってそれを避けた。 でも、 「せいっ!」 彼女の剣は腕が伸びきる前に止まると、その位置から落ちてくる。 『剣の重みで振り下ろす』と『腕の力で振り下ろす』。その両方が効いた重みのある一撃。 「っ!」 受けとめたときの手応えが、全然違う! それでもなんとか受け切れたわたしは、素早く防御に使っていない左を突き出す。 それはあっさりと後方に跳ばれかわされた。 「しばらくは手を出さないんじゃなかったんですか?」 安い挑発。たぶん、仕返しのつもりなんだろうけど。 「しばらくの間、受けててあげたでしょ?」 答える代わりにそう言う。 この言葉の意味は、彼女も理解できたと思う。 ようするにこれからは手を出すぞという宣言。 わたし達はしばらく睨み合う。 間合いの取り合い。たぶん、しばらくは続く。 って、あれ? はれれ? う〜……頭がくらくらしてきた。なんか、倒れそう…… よく考えたらお昼、アセロラドリンクだけだ。朝は食べてないし寝不足だし――ついでに早朝ランニングもしてる。 いくら授業中に寝てたとはいえ、それで準備運動もなしにこれだけ動けば貧血も起こすわね……確かに。 よし、決めた。倒れる前にケリをつけちゃおう。 わたしは木刀を左は逆手、右は順手で握る。 右手は思い切り引き、左腕を前に伸ばして前屈みになる。 よく考えなくても、引いた右手による突きの技だと分かる構え。べつにバレたって構わない。どうせ、止められないし。 本来は御神流の歩法術の奥義と組み合わせる技だけど、あの歩法術は体調が万全じゃないと使えない ――ようするに、今のわたしには使えない。 だけど、これだけで充分。 「変なこと考えないほうがいいよ。ヘタに動くと大怪我するだろうから」 それだけ言って、 「行くよ!」 わたしは地を蹴った。 「はぁぁぁぁぁぁっ!」 そして踏み込み、その勢いで右手を突き出す。 「破っ!」 それを彼女は間一髪で避けると木刀を振り上げてくる。 だけど、 「せいっ!」 勢い付く前に、突き出した右をその剣に叩きつけると、そのまま身体を捻り、順手に持ち替えた左で再び突きを放った。 その突きは真っ直ぐ彼女の喉元に向かって伸びていく。 彼女の顔が驚愕に歪む。 そして、ギリギリのところで寸止めする。 「勝負あり!」 勇吾さんがそう宣言した直後、わたしの視界が回り始めた。 ありゃ、どうやらピークが……。 意識、フェードアウト……って感じ? ※ む〜、愛しの魚月が危ない勝負をするのは見ていられなかったけど、いや〜驚いた。 生まれ変わっても動きの本質を魂が憶えているらしい――まぁ、それでも彼女には敵わなかったけどさ。 あの動きは愛する魚月が天使だったときの技だ。 魚月は自分の前世が天使であったことなんて知らないはずなのに……まぁ、なんというか。 ついでに俺のことを思い出してくれるとラブラブ度がアップするんだけど。 ん? なんだ? 黒い光の塊みたいなものが目の前に――って! 黒天使!? 「彼女が……聖女?」 他の人達には言葉どころか姿すら見えていない黒天使はつぶやく。 聖女? 誰のことだ? いや、誰もクソもない! 聖女の力を受け継いでいるのはこの世で一人だけ。 ―――魚月! |